定冠詞、不定冠詞の変化がよくわかりません
そもそも冠詞とは何か、については6月21日の授業で時間を設けて説明した通りです(わからなければ高校英文法の教科書や参考書で復習するか、私に尋ねて下さい)。
変化がよくわからない、というのはおそらく、「格」がよくわからない、ということではないでしょうか?教科書で説明されているように、まず1格(主語)と4格(直接目的語)の形を完全におぼえるのが先決だと思います。それから、授業でも再三言っていますが、表をまるおぼえしただけで実際にドイツ語を書くのはなかなか難しいと思います。どんな時にどの格を使うのかは、例文を読みながら確認して下さい。
ドイツ語が読めない/読めても書けない
授業で一人一人がドイツ語を発音できるような機会をなるべく設けます。それはそうと、教科書についているCDを聴いて自分で練習していますか?どんな語学の天才でも、週1回だけの練習で読めるようにはなりません。家で声を出してやってみて下さい。へたでもかまいません(意外と誰も聞いてません)。
発音記号が読めない(正確には『習ってない』)人は、英和辞典の巻末や英文法参考書に「発音記号の読み方」が載っているはずなので、ぜひこの機会に習得して下さい(特に英文専攻や語学教師志望の人)。
外国語を書けるようになるには、繰り返し書く練習をするのが結局は一番です。いらない紙を大量に用意して(ミスコピー紙なら大学のいろんなところにあるはず)、例文を3回でも5回でも10回でも書いて下さい。字はきたなくてもかまいません(どうせ誰も見ません)が、発音しながらやるのが効果的です。
なんで名詞が男性・女性・中性になるのかわかりません
「性」という日本語の文法用語が、誤解を招いているのではないかと思います。授業でも言ったことですが、名詞の性(英語で gender )は、いわゆる普通の性(英語で sex )とほとんど何の関係もありません。机のどこが男っぽいのか?鞄はどうして女らしいのか?なぜ窓はどちらでもないのか?といくら考えても正解は出ません(父=男性名詞、母=女性名詞は例外)。実はこれは、冠詞による分類でもあるのです。
つまり ①ドイツ語の名詞を、前につく冠詞の形で分類しました ②そうすると3
種類にまとまりました ③それぞれに「der がつくのはmasculine(男性)」「dieではfeminine(女性)」「dasではneuter(中性)」としゃれた用語を考えてみました…というのが本来の順番だと思った方がいいでしょう(ちなみに普通の英語では『male(男性)』『female(女性)』『neutral(中性)』です)。
「Tischは、おとこ」「Tascheは、おんな」「Fensterは、ちゅ~」と暗記するよりも「der Tisch」「die Tasche」「das Fenster」と定冠詞をつけておぼえる方がいいと思います(不定冠詞 ein だと…自分でどうぞ)。
性の区別なんて面倒くさいかも知れませんが、これはほとんどのヨーロッパの言語にあるものです。現代英語では消滅していますが、これは珍しい方です。例えばオランダ語やロシア語やギリシア語はドイツ語と同じく男性・女性・中性。フランス語やイタリア語やスペイン語は男性・女性だけ。スウェーデン語やノルウェー語やデンマーク語は中性・両性(男性・女性の区別がない!)。
でも、ヨーロッパの言語の性は3つ以内におさまるだけまし(?)な方です。オーストラリアの(英語ではなく)ディルバル語では名詞を「男性と生物」「女性と水・火・争い」「肉以外の食物」「その他」で4つの性に分けています。アフリカの多くの国で公用語となっているスワヒリ語では、名詞が約20種類(!)の性に分類され、それぞれの種類に応じて動詞や形容詞の形がすべて変化します…まあ、これはもう「性」とは言えないので「カテゴリー」とか「クラス」と呼びますが、くわしく知りたい人は「もし『右』や『左』がなかったら」(大修館書店 \1500)という本が1998年に出ているので、読んでみて下さい。
でも日本語にはそんな区別ないじゃないか、って?そうでしょうか?例えば a car や a book や a bird をそのまま「一個の車」「一個の本」「一個の鳥」とは言いません(普通は)。「一台の車」「一冊の本」「一羽の鳥」というのが普通です。そうかと思えばパソコンは「一台」なのにタンスは「一竿(しかも『いちさお』とは読まない!)」、犬は「一匹」なのに兎は「一羽」です。このような数え方(助数詞)の違いによる名詞の分類は中国語にもありますが、いずれにせよドイツ語の der / die / das どころの話じゃありません。
つまり、名詞を何らかの基準でグループ分けするのは、人間のことばに共通した現象なのです。日本語や英語が簡単で、ドイツ語やフランス語がややこしい、とは決して言えません。認識を変えましょう。
一つ一つおぼえていくしかないんですか?何かおぼえるコツはないでしょうか?
実は別紙のコピー(『必携ドイツ文法総まとめ』(白水社)S.68~71 より)の通り、若干の傾向はあります。他のドイツ語の文法書も参考にしてみて下さい。
ただ、これを全部読んでいくよりも、地道に一つ一つおぼえる方が結局ラクだと思うんですが…
動詞の変化が難しかった
お気持ちはお察しします。私もそうでしたから。でもヨーロッパの言語では、動詞の人称変化がほとんどない現代英語の方が珍しいのです(2人称 du の語尾変化は昔の英語にもありました)。「外国語≒英語」の日本人には辛いところですが、この点よーく理解して、練習して下さい。それに ①不規則変化( be と sein,have と haben )があることや ②3人称の語尾変化があることは英語だって同じです。中学・高校時代に wash や go や fly や say の「3・単・現」で苦労しませんでしたか(つづりだけでなく発音も)?
助動詞の用法
意味は英語の助動詞とほぼ同じです。違うのは ①「助動詞+原形」ではなく「原形は文末」であること ②他のドイツ語の動詞と同じように人称変化することです。辞書で must と müssen を比較されたし。
分離動詞がよく理解できてないです
「分離動詞」という名前でイヤになる人が多いのですが、例えば英語でも give up や turn off や look forward to のように、複数の語句を一つの動詞のように使うものがあります(高校までは『熟語』で済ませていたかも知れませんが、正確には『句動詞』『群動詞』といいます)。
ドイツ語の分離動詞もこれと同じで、例えば「あきらめる」は geben auf です。英語と違うのは ①実際の文では auf が文末に置かれること( Ich gebe das Rauchen auf.『私はたばこをやめる』 Ich gebe auf das Rauchen. ではない) ②辞書では aufgeben で探さなければならないこと(なぜなのかは『不定詞』や『過去分詞』を学ぶとわかります)です。
前置詞の用法がよく分からなかった
前置詞の数、前置詞の意味は英語と大して変わりません。違うのは ①前置詞のうしろの名詞の格が前置詞によって違うので、それをおぼえておかなければならない(事実上3格か4格)こと ②一つの前置詞でも、動作の違いによって名詞の格が違うことがある(ただし種類は限られている)ことです。
基礎からわかりません/全部がよくわかってません/文法が難しかったです
「文法が難しい」というのは「ドイツ語の文法が難しい」のですか?「『文法』というものが(英文法も含めて)難しい」のですか? いずれにせよひとことではアドバイスできません。具体的にわからない箇所があれば、授業中でもいいから質問して下さい。周りの目が気になるのなら(これはこれで問題だが)授業後の提出物に書き添えるか、メールを送る(iiura@hiroshima-u.ac.jp)か、水曜日の控室へ来て下さい。
テストについて
9月27日に説明した通り、筆記試験で50点以上なら単位を出しています。50点以上でC、60点以上ならB、80点以上ならAです。50点未満の場合「平常点」として20点を足し、50点を越えればCとしています。面接型の試験(例えばドイツ語で読んだり話したりしてもらう)も取り入れたいのですが、現在の人数では無理です(1人につき5分でも2時間はかかりますし、たぶんそれでも足りないでしょう)。
平常点が少ないと思われるかも知れませんが、出席であれ欠席であれ、大切なのは「ドイツ語がきちんと理解できているか」ということです。そもそも「まじめに出席している」というのは、大学生に対して特別に点数を足すべきことでしょうか?また、最低限必要な事項は授業で理解可能なように説明し(そのために私も毎年努力していますが、注文があれば遠慮なくどうぞ)、最終週に質問時間も用意することで、試験当日までには全員に平等な準備の機会を設けているつもりです。ですから再試はしません。病気などで当日やむなく欠席した場合の追試は、これは本人にはどうしようもないことですから相談に応じます。
もちろん、再試をする(あるいは試験そのものをしない)先生方もおられますし、私もその先生方のお考えは尊重します。ただ私の考えは、いま書いた通りです。先生によってやり方が違うじゃないか、という文句があるかも知れませんが、そういういろんな考えを持った人たちがいろんなやり方で授業をしていることが(高校までとは異なる)大学のいいところではないでしょうか。