語順など、どうしても英語の感覚と混同しがちです
混同するくらい英語ができるということで、それ自体は別に悪いことではありません。ちなみに私が英語をしゃべると発音がドイツ語っぽいと言われ、英文を書けば語順がドイツ語っぽいと直されます。
表でおぼえても文で出てくるとわかりません
これはやり方が逆です。文を理解してから表で復習する方が確実に身につきます。ただしこのやり方は時間がかかります(だから毎日少しずつやること)。
助動詞の用法
意味は英語の助動詞とほぼ同じです。違うのは次の2点;
①「助動詞+原形」ではなく「原形は文末」。
You must go to school.
Sie müssen zur Schule gehen.
②他のドイツ語の動詞と同じように人称変化する。
I must….. / you must….. / Michael must…..
ich muss….. / Sie müssen….. / Michael muss…..
形容詞の変化がわかりません
まず冠詞の変化をおぼえてください。話はそれからです。 →
単語がわかりません
中学生が英単語をおぼえるのとまったく同じことです。
①書きながら発音すること(紙が欲しければ、あげます)。
②おぼえたかしら?と思ったら実際の文で試すこと。たとえば次の文
Der Lehrer fährt nach Berlin mit dem Zug.
a. 「ベルリン」って何? → もっと新聞を読まなければと反省しながら辞書を引く(以下b. へ↓)
b. 「ベルリンへ」は何となくわかる → そうすると mit dem Zug は交通手段かと見当をつける → バス?飛行機?列車?船? → 飛ぶ(Flug < fly)ものではなさそう → 「バス」なら英語と同じ Bus だ → 船は(地理的に)ありえない → 「列車」じゃなかろうか? → そういえば教科書にICEの写真が載っていた → ほぼ間違いないけど辞書で確認 →調べたらやっぱり der Zug 「列車」だった → 発音は [tsu:k](以下c. へ↓)
c. 「ベルリンへ」と「列車」は何となくわかる → mitって何だろう?→ 「列車で」ってことか? →では mit は「~で」か? → でも dem Zugって何だ? → たしか dem って男性名詞か中性名詞の冠詞じゃなかったか? → 教科書の表を見たら3格だった→ ということは Zug は男性名詞か中性名詞で、mit のうしろだと3格になるということか? → そういえば教科書に「 mit +3格」と書いてある(以下d. へ↓)
d. 「ベルリンへ」も「列車で」もわかる → じゃあ fährt は「行く」かも → 辞書を引くと「fahrenの3人称単数現在形」って書いてある →もしかして「にんしょうへんか」ってやつか?→主語は der Lehrer らしい → 「レへラーさん」ではなさそうだ → 職業かな? → 学生?会社員?時計職人? → などと考えながら辞書を引くと「教師」 → 「さんにんしょうたんすう」って「彼(教師)が…」ってことか(以下、無限に続く)
命令文・疑問文が難しい
相手が「あなた」ならものすごく簡単です。
Sie gehen. → Gehen Sie! → Gehen Sie?
Sie lernen Deutsch. → Lernen Sie Deutsch! → Lernen Sie Deutsch?
命令の相手が親しければさらに単純です。ただし動詞による(←これが厄介)ので、詳しくは教科書を。
Gehe!(Geh!でも別にかまわない)
Lerne Deutsch!
ていねいな表現がよくわかりません
Ich möchte………(くれぐれも動詞は文末) や Könnten Sie………?(これまた動詞は文末)
などは、まずこのかたちでおぼえる方が実用的です。英語でいうと
I'd like to……… や Could you………?
のことです。実は動詞の変化の種類も同じなのですが、これはまだ先の話。
分離動詞がよくわかりません
①たとえば Ich fahre nach Berlin ab. という文を見たら「あれ? Ich fahre nach Berlin. で文になってるのに、最後の ab は何?」と不審に思いましょう。それを動詞 fahre にくっつけてabfahre → abfahren を辞書でさがすと「出発する」が見つかります。fahre → fahren「(乗り物で)行く」を調べても無駄です。
英語の take off の意味を調べるのに、take の項目をさがしてもわからないのといっしょです。
②たとえば辞書に「ab┃fahren」と載っていたら「分離動詞」です。ab は動詞からはずして文末に。
× Ich abfahre nach Berlin. 〇 Ich fahre nach Berlin ab.
昔は ab も、英語の take off の off のような「つけたし」の副詞だったと考えられています。それが長いこと fahren とペアで使われるうちに、fahren とは別の動詞として辞書にも載るようになったのです。
take offが英和辞典でtakeとは別の見出しになっていたりするのといっしょです。
名詞の性や複数形は丸暗記するしかないのですか
そうでもないのですが、名詞のかたちと性・複数形の関係を説明するより、そのままおぼえた方が絶対早いと(経験上)思います。名詞と性・数の関係は、昨年度後期に配ったコピーにも載っています。 →
性をおぼえる一つのコツは、文でおぼえることです。たとえば
Ich habe ein Buch in der Tasche.
という文から Buch と Tasche の性の見当がつきませんか?
冠詞 ein は男性と中性にしかない形、in のうしろの冠詞 der は男性名詞1格の der かもしれないが、in のあとに1格は来ない → 中性に der はない → 話の内容から見て複数形ではなさそう → じゃ女性名詞か?
文法がわかりません
①ドイツ語の文法がわからない → 具体的に私に聞いてくれれば、あらかた解決するでしょう。
②「文法」と言われるともうダメ → 高校の英文法参考書(この際ぶあついもの)を復習してみましょう。基本的な文法用語は、この際おぼえておくことをすすめます(特に英語専攻・教職志望の人)
試験問題は教科書からそのまま出してください
教科書からそのまま出しています。ただし、授業内容の範囲内で単語を入れ替えているだけです。
それくらいの工夫、いいでしょう?
テストについて(続)
私が再試をしないことについても意見がありましたので、前回とは別の角度から理由を説明します。
①ここにAさんとBさんがいて、二人ともドイツ語は同じくらい苦手だったとします。
②ドイツ語の試験が近いので、二人とも直前まで同じくらい勉強したとします。
③その結果、Aさんは何とか合格点を取りましたが、Bさんはいま一歩努力が及ばず合格点に達しなかったとします。
④そこで私が「Bさんはもう一歩だったから、来週もう一度試験をしましょう」と言ったとします。
これはBさんにとっては満足かもしれませんが、Aさんに対して公正さを欠くのではないでしょうか?
私は、何にでも競争を持ち込む近頃の世の中の風潮には反対ですが、大学の学問に関しては「結果」よりも「機会」が平等であることを大事にしたいと思います。試験前の質問の時間、控室やメールアドレスの案内など、「機会」は充分に提供しているつもりです。難しい話かも知れませんが、ひとつ考えてみてください。それでも納得できなければ、どうぞまたご意見を。
井浦伊知郎 18.04.2001