UÇK(コソヴォ解放軍)の元政治部代表アデム・デマチAdem Demaçiが、新しいコソヴォ和平案についてロイターのインタヴューに応えた。同氏はUÇKの現路線に反対し、現在は代表を辞任している[アルバニア語版からの訳。原文は英語];
「セルビア軍・警察がコソヴォを手放せば、そこに住むセルビア人達があとを追って逃げていくのは、当然な恐怖心のあらわれでしょう。
愚かな戦争が終わるのは結構なことです。ミロシェヴィチも、自分の国家が崩壊し、民衆が傷付いていることに、遅ればせながら気付いたのです」
6月3日にセルビア議会が受け入れた和平案によれば、セルビア軍は7日以内にコソヴォから撤退することになる。
デマチ氏は、ユーゴスラヴィア軍が行った虐殺にも言及した。
「私達のもとには失望しきったアルバニア人が大勢います。みな自分の家族を一人、またはもっとたくさん失っているのです。みな、血でその手を汚した連中に復讐してやりたいと思っているでしょう」
コソヴォを離れた百万余りのコソヴォ・アルバニア人からはひどい状況が語られているが、一方でペンタゴン当局は6月3日、UÇKがコソヴォ撤退中のセルビア軍に攻撃を行わないことを期待している、と述べている。「UÇKにとって基本的な関心事は、セルビア軍ができるだけ早くコソヴォを出ていくことです。撤退中の軍隊に報復しようとはしないでしょう」(ケン・ベイコンKen
Baconアメリカ国防省報道官)
デマチ氏は3月の和平交渉を拒否し、UÇKの代表の地位を退いた。ランブイエ会談が認めているのはコソヴォの「広範な自治」に過ぎず、UÇKが求めていた「独立」ではない、ということによる。
今回の新たな和平案にも、デマチ氏は厳しい批判を加えている。コソヴォ・アルバニア人代表団が対話から外されており、コソヴォの独立にも触れていないからだという。
「これでは遠い将来、コソヴォ・アルバニア人は敗北者となってしまいます。セルビア人とアルバニア人が共に交渉のテーブルに就かないのなら、国際的交渉は何ら得るところがなく、共通の合意にも到達しないでしょう」
セルビア、モンテネグロ、コソヴォの国家連邦[konfederata 現在の『連邦』よりもゆるやかな形態を指す]が、セルビア人にとってもアルバニア人にとっても妥当な解決策と考えられている。
デマチ氏はコソヴォ・アルバニア人の政治勢力にも苛立ちを隠さない。コソヴォ・アルバニア人の政治指導者の多くは、難民となってアルバニアへ逃れ、民衆の信頼を失ったという。
「空爆が始まった途端、指導者達は国境を越え、コソヴォを去ってしまいました。それは人間として当然の恐怖心でしょうが、ともかく彼らはコソヴォ民衆の信頼を失ったのです」
こう語るデマチ氏自身は、ユーゴスラヴィアの政治犯として28年の獄中生活を送っている。
「どの政治指導者達も、コソヴォ独立の準備はできていると豪語してきました。その彼らがやっていることは何です。逃げただけじゃありませんか!」
デマチ氏は、穏健派の指導者ルゴヴァIbrahim Rugovaの人気についても、ミロシェヴィチとの会見と共に凋落した、と語る。
「ルゴヴァの訪問は、時期が良くありませんでした。一般の人々の中にあった評判さえ落としてしまいました。もっとも、評判を落としたのはUÇK指導部だって同じです。彼らは国外の事務所でふかふかのソファに腰掛けて、コソヴォのアルバニア人達にあれこれ呼びかけているだけなのですから」
(Kosova Info 99.06.06)