クシュネル国連コソヴォ担当官は語る
 国連の派遣で1999年7月よりコソヴォの行政を担当しているベルナール・クシュネルBernard Kouchner(60)が、コソヴォ再建と民族和解の現状についてドイツ誌「Der Spiegel」12月20日号のインタヴューに答えた。
あなたは、コソヴォではいはゆる文民の長にあたるわけですが、国連が初めて統治する土地[コソヴォを指す]で最大の問題は何ですか?
   人々が互いに話し合おうとしないことです。それはアルバニア人とセルビア人の間だけでなく、アルバニア人同士についても言えることです。数百年にわたる過去のいきさつのせいで、今後の6ヶ月間のことさえ決めることが出来ないでいるのです。めいめいが自分の属する民族のことばかり考えているのですから。
UNMIK[国連コソヴォ暫定行政機関]が今なお民族間の衝突を止められず、機能的な行政機構を建設できないのは何故でしょう?
   みんな「奇跡」を求めているからです。この5ヶ月間、私はアルバニア人に対して、選挙を実現するために必要な行政上の役割をいろいろと任せてきました。しかし彼らは結局、お互いに協力することができなかったのです。セルビア人の方もそうです。個々のセルビア人の安全を守ることなど[今は]幻想に過ぎません。余りにも警官が少ないのです。我々は6000人の警官を配備すると約束しましたが、現時点では1000人しか準備できていないのですから。
   とは言え、西側がアルバニア人と共に、主権国家内で脅かされている少数派を救うことができたのは、大きな前進でしょう。

今ではセルビア人が迫害を受けており、自前の民族防衛を求めていますが?
   馬鹿げたことだし不可能です。そんなことをしたら新たな民族間の分断を生み出すでしょう。セルビア人も、コソヴォ警察に加わることはできるのです。
本来は2000年春の選挙が考えられていましたが、何故いつも延期されるのですか?
   先ずは住民の登録を開始しなければいけません。12月末までには実現するはずでしたが、そのための資金が問題なんです。約束の1500万マルクはどうなったのでしょうね?
ではその資金の流れを妨げているのは?
   みんなですよ。EUは個別の具体的なことには資金を出してくれますが、[年度毎の]予算を支援してはくれません。我々はここの教師や労働者に賃金を支払わなければならないのに、まだ小遣い程度の額しか出せないのです。ブリュッセル[EU本部を指す]は来年4億マルクの資金を用意していますが、国家機構を建設するには余りにも少な過ぎます。
アルバニア人政治家達は、選挙後に[アルバニア人]単独の政権を樹立するつもりでいます。新たな混乱の恐れはありませんか?
   KFOR[コソヴォに展開中の多国籍軍]は選挙後も撤退するわけにいかないでしょうし、UNMIKも引き続き顧問役として残ることになるでしょう。しかし、いろいろ問題はありますが、コソヴォの民主主義は他のバルカン諸国よりも急速に進展すると思います。選挙が自由なものであり、かつOSCE[欧州安保機構]の充分な監視下で行われることが肝要です。
ベオグラード[ミロシェヴィチ大統領とユーゴスラヴィア政府のこと]が今後もコソヴォに与える影響は?
   コソヴォのセルビア人とは緊密な関係が続くでしょう。ベオグラードが我々とも関係を結びたいのであれば、こちらにもその用意があります。とは言え、我々の仕事はコソヴォに限定されたものです。ここはもうセルビアの一部ではなく、ユーゴスラヴィア内の一地域なのです。我々としては、ティトー時代の様な自治州の形態が理想的です。
ニューヨークの国連本部はあなたの決断に対して、常に理解を示しているというわけではありませんね。手を引くとしたらいつですか?
   私の権限が縮小されたわけではありませんし、私は辞めるつもりもありません。ただ、ここでは時々非常に孤独を感じることがありますが。

(Der Spiegel 51/1999)
 

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