かなた・・・
サリ・ベリシャ ドイツ誌に語る

記者:数千人が犠牲となった内戦[訳注:1997年春の『ねずみ講』騒動]の後、あなたは権力の座を失いました。今度は武力で権力を奪回するつもりですか?
ベリシャ:冗談じゃありません。社会党こそ今回の騒乱の責任者です。我が民主党の副党首アゼム・ハイダリの葬儀の列に向かって、官庁の方から最初に撃ってきたのですよ。そのせいで事態が収拾不能になったのです。
記者:党事務局が獄舎になるようなことがあっても、構わないのですか?
ベリシャ:それはあり得ることです。ファトス・ナノ首相は権力を誇示しようとするでしょうが、彼の統治能力に対する民衆の信頼は劇的に落ちているのです。彼らの一味はハイダリまで殺したのですから。
記者:どんな手段を用いても、あなたは政権を倒そうとするつもりですか?
ベリシャ:我々は平和裡に目標を達成したいと思っています。デモ参加者の数は増大するでしょう。なぜなら、我々こそがテロルの政権と闘っているからです。
 かつての独裁者エンヴェル・ホヂャの時代には、まだしもある程度の秩序が保たれていました。今やアルバニアにあるのは、犯罪による独裁です。
記者:ファトス・ナノは昨年の選挙で圧倒的多数の支持を得ています。彼は合法的な首相ですよ。
ベリシャ:だが、どうして彼は勝てたんです?それは彼がイエスマンだからですよ。コソヴォの同胞さえも、彼は裏切ったのです。セルビアのミロシェヴィチに気に入られようとして。
記者:一方であなたの党はコソヴォ紛争を煽り立てている。
ベリシャ:私がコソヴォ解放軍を支援しているのは、彼らがセルビアのテロル体制と闘っているからです。
記者:民主党は、更なる流血の事態にはあなたを支持するでしょうか?
ベリシャ::百パーセントその通り。ただし、その騒乱が社会党によって扇動されているならの話です。アルバニアでは、十人のうち二人が懐に武器を忍ばせているのですよ。誰かが撃たれたら、その人は自衛するでしょう。アルバニアには公的秩序などもはや存在しないのです。
記者:それは、あなたが大統領だった頃の方がもっとひどかったでしょう。一年半前に民衆は国中の軍の武器庫を荒らし回り、国を混乱に陥れたのですよ。
ベリシャ:西側はあの時、私が事態を力で掌握することを望んでいたではないですか。私はそれを拒否したのですよ。人々はあの時、正義のために怒っていたのです。ネズミ講で自分達の蓄えを失ってしまったのですから。
記者:あなたの政府はそのいかさま商売を適当な時にやめさせなかった。
ベリシャ:我々は過ちを犯したし、それについてはアルバニア国民にも陳謝しました。私は、我々の政策の方が社会党のそれより優れているということを民衆が理解してくれるまで、辛抱強く待つつもりです。
記者:民衆を内戦へ駆り立てている対立政党の政治家との大連立で、国を安定させることができると思いますか?
ベリシャ:ファトス・ナノ抜きの社会党となら、連立は考えられます。しかし我々の目的はまず何よりも、専門家から成る実務的な政府です。それなら、半年から九カ月の間は受け入れるでしょう。それから後は選挙をすべきです。
記者:あなたがまた大統領になれるチャンスはあると思いますか?
ベリシャ:私はどんな仕事も拒みません。殺された党友のアゼム・ハイダリが、死の直前に言ってくれたのです。私は大統領のスタイルは失ったが、そのかわり、本来なるべきもの、つまり闘士になれたんだ、とね。彼を裏切るわけにはいきませんよ。

(DER SPIEGEL 39/1998[9月21日号])
 

こなた・・・
パンデリ・マイコ首相 ドイツ誌に語る

記者:辞任した前任者のファトス・ナノは、アルバニアの終わりなき危機を予言しています。アルバニアという国は、統治不可能なのですか?
マイコ:我々を苦しめているのは、共産主義的な思考様式、つまり政治的反対派を敵と見做してしまう様な傾向が、社会における心理現象として残っているということです。そんなアルバニアですが、それを変えることはできると思います。
記者:無政府状態の終焉、国民的和解の見込みはありますか?
マイコ:私は楽観視しています。我々が求めているのは正常な対話、国内問題を議論するために、円卓会議での野党との対話を段階的に進めることです。
記者:和解への呼びかけにも関わらず、内戦の危機は依然残っています。野党の指導者であるサリ・ベリシャを内乱罪で告発しても賢明でないのでは?
マイコ:それは司法の問題です。個人的には、彼を監獄へ追いやるのには反対です。ベリシャはもはや政治的に重要な存在ではありませんが、民主党にとっては象徴的存在ですから。
記者:アルバニアにおける主要な問題の一つに、遍在する汚職がありますが、これとどう闘いますか?
マイコ:そのためには、とりわけ誘惑を受けやすい警官をより高給で遇しなければなりません。既に西側の同僚からも具体的な支援の申し出を受けています。
記者:あなたは、コソヴォの同胞をどうやって救うつもりですか?
マイコ:我々の能力は限られています。コソヴォ問題は国際問題です。
(DER SPIEGEL 41/1998[10月5日号])