インタヴュー イスマイル・カダレ、コソヴォを語る

 アルバニアを代表する作家イスマイル・カダレ氏が、2月上旬にコソヴォ解放軍系通信社 「コソヴォ・プレス Kosovapress」とラジオ局 「自由コソヴォ Kosova e lirë」のインタヴューに答えました。
  コソヴォ人民運動機関紙「コソヴォの声」のHP(1999.02.11)で公開されている内容を紹介します。

アルバニアの政治における分断は、ここ十年余り、あなたにとって最も大きな懸念 だったわけですが、本日はこのことについて「コソヴァプレス」と「自由コソヴォ」に一言。
 言われたところの懸念は、決して薄らいでいないと思います。全ての人々がそれを試みてきました(そしてそれが何千というアルバニア人によることを私は想起します)が、分断の危機が更に増しているという不安はなお存在します。だからこそ全力を尽くして、この害悪と日々常に、献身的に、力強く、遠慮容赦なく、闘わなければいけません。前にも言ったことですが、アルバニア語は世界でおそらく初めて、「分断」という語に 「裏切り」という別の意味を持つ、そんな言語になってしまうのではないでしょうか。

コソヴォ解放軍の誕生は、コソヴォ問題の国民的・国家的解決の為の運動における 内的かつ外的な要素となっただけでなく、アルバニアにとっても民族統一を再考するきっかけとなっています。この点については?
 私も同感です。それは多くの人が政治に目を向ける為の目覚めに貢献しました。おっしゃる通り、人々をそこへ導いたのです。もちろん、そこへ至る為に一つの政治組織が戦火や殺戮や破壊を必要とせざるを得なかったと考えるのは、悲しむべきことです。しかしこの悲しみもまたアルバニアの運命の一つです。最も責任ある政治組織により、多くの問題がアルバニア民族にとってより良い方向に進んだことでしょう。更に、より広がりを以て、また長期の活動によって、問題は広範なアルバニア人輿論の中へ導き入れられました。この世間の道徳的堕落と退廃の時代の中で、コソヴォに再び現れた理想主義と自己犠牲の姿勢こそ、世界に住む全てのアルバニア人の精神と道徳をまさに純化したのです。

6カ国調整グループによる最近の会談では、コソヴォ問題解決の時期を3週間と限定し、またそれをNATOの最後通告によって一層強めています。なぜこれ程突然に国際的な決定が為されたのでしょう?
 それに答えを出すのはまだ早いでしょう。私達はたくさんのことについて知らされていますが、まったく知らされていないこともたくさんあります。後になれば、この唐突な決定にコソヴォ・アルバニア人の悲劇がどの様な役割を演じたのか、また西側の人々がどの様な恐るべき発見(例えば、電話によって為された虐殺指令など)を手にすることになるかも明らかになることでしょう。しかしながら一方で、コソヴォでは西側同盟の信頼関係、またNATOの威信が試されているのであり、西側世界の亀裂も予見され得るでしょう。

報道機関は、パリ会談への出席をアルバニア人側がためらっていると伝えています。こうした報道をお聞きになった時、どう思われましたか?またこれに関連して、コソヴォ解放軍とヨーロッパ連合との関係をどう御覧になりますか?
 そうしたためらいがあったという話は、もちろん聞いています。同時に、アルバニア人側のパリ訪問拒否はミロシェヴィチを利するだけだ、というコメントも耳にしていますが。後の方の御質問に関してですが、これ[EUとの関係強化]はアルバニアがその長い歴史の中で初めて、母なるヨーロッパの大地に自らの足場を固めるという数世紀来の夢を実現できる、またとないチャンスだと思います。この念願こそ、ジェルジ・カストリオティ・スカンデルベウGjergj Kastrioti Skënderbeu[オスマン・トルコ支配下のアルバニアを独立へ導いた人物。アルバニア民族の歴史的英雄]が5世紀も前からその構想を練っていたものであり、この夢こそ、19世紀の[主に言語・文学の]復興運動で再び確かなものとなった、アルバニア民族にとって揺らぐことのない、唯一つの道ではありませんか。この道を妨げることは何であれ、私達にとって死を意味します。オスマン帝国による統治の後、アルバニアにおける共産主義は、この夢を妨げ、アルバニアを東方に引き戻そうとしました[この部分の発言は、90年代以降のカダレの一貫した見解]。こうした文脈で考えてみると、アルバニア民族による自由の為の努力は、ヨーロッパ大陸の価値観の枠外では実行不可能なのです。この点では、現在のコソヴォにおける武装組織であるコソヴォ解放軍も例外にはなりません。私達が西側に対して抱くであろう不満や誤解とは関係なく、私達の世界、私達の運命はそこにこそあります。私達はヨーロッパを捨てて他の大陸には行けないし、好きなところに夢の土地を造り出すこともできないのです。アルバニア民族に対して提唱される無責任な大言壮語や無謀行為には、軽蔑を以てこれをうち棄てるべきです。これが私の以前からの考えです。また私は、セルビアの獄中深くでウクシン・ホティUkshin Hoti[コソヴォの作家・知識人]が別の方法で同じ結論に至ったことを知り、満足しています。
 最後に:アルバニアの進むべき道は、ジェルジ・カストリオティの時と同じく西側です。セルビアのそれは東側です。ここに、つまるところ我々とセルビアとの運命の分岐点があります。それはアルバニア民族にとって最も肝心なことであり、そのことを私達は世界に伝えなければならないのです。

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