XVII

 また秋が来た。暑い夏の間に乾ききった昔の水溜まりが、今になって再び水をたたえていた。鳥が群れを成して、大空を捨て去り飛んでいった。
 町のはずれの平原の真ん中に、木馬は相変わらず立っていた。古びた板材はあちこちがいたみ、吹く風が無数の裂け目と穴を抜けびゅうびゅうと鳴った。
 彼らは相変わらずその中にいて、古い敷布の上で怠惰に寝そべっていた。木馬の製作者は首にマフラーを巻き、ずっと咳をしていた。ミロシュとマックスは目を半分閉じていたが、まどろんでいるのか、何か考えているのかは分からなかった。いつもなら時間を無駄にしないオデュッセウス・Kさえも、手を組んでじっとしていた。頭の近くにある板の裂け目から、片目で平原の一部を、とりわけ、アカマースの墓がある辺りを見ていた。ちぎれた新聞紙が風に吹かれて墓の周りを舞っていた。
「哀れなアカマース」
彼はそう思って、深い悲しみに襲われた。もう誰も、自分たちに新聞を持ってきてはくれないし、どこからも、何のニュースも自分たちには届かない。平原を眺めながら彼は、頭にあれだけの傷を負いながらどうやって沼の中へ埋もれることができたのだろうと考えていた。わけても「君のところのヘレナを見たぞ」とマックスに伝えた時の、おびえたあの目つきが記憶から離れなかった。
「何をぶつくさ言ってるんだ?」
とロベルトが訊いてきた。
「いや別に。アカマースのことを思い出していたんだ。あいつが最後にした、ヘレナの話をな」
「きっと狂ったのさ」
ロベルトは言った。
「頭蓋骨にあれだけ銃弾をやられれば、それも当然だよ」
「俺には、あいつが狂ってたようには見えなかったが」
とオデュッセウス・Kが言った。
「狂ってたさ」
マックスはそう言って、充血した目を見開いた。
「俺がヘレナをこの手で殺したんだ」
 その視線は、古い槍のところで止まった。先端の赤くなったところに黒が混じっていたが、錆なのか、乾いた血なのかは分からなかった。
 木馬の製作者がまた咳をし始めた。すると彼らは、その咳をよく聴こうとするかのように、喋るのを止めた。
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