コソヴォ解放軍 声明(拙訳)

  コソヴォ解放軍 Ushtria Çlirimtare e Kosovës= UÇK (「ウー・チェー・カー」と読む)の声明がコソヴォ人民運動(Lëvizja popullore e Kosovës  http://www.zik.com/)機関紙「コソヴォの声 Zëri i Kosovës」のHPで公開されています。日本にほとんど伝わってこないコソヴォ解放軍の主張を、ごく一部ですがどうぞ御一読下さい。


「アピール 祖国の危機ー故郷は訴える」(1999.01.12)

親愛なる同胞よ、
 我らが同胞、我らが兄弟姉妹の生命は常に危機に晒されており、また我が人民の武装抵抗の為の財政手段に対する封鎖を、ブヤル・ブコシ Bujar Bukoshi 政権[訳註:コソヴォ自治州政府]はいまだに解除できないでいる。こうした厳しい戦況の中で、コソヴォ解放軍総司令部は「故郷は訴える」基金を通じた援助の呼びかけを行ってきた。最も具体的かつ最も多様性のある支援手段として、また同胞の要求とも緊密に結びついて、この活動は1999年3月1日まで、闘争の為の支援が常に必要とされる中、事態の推移を見守りながら継続されるだろう。
 コソヴォ解放軍総司令部と「故郷は訴える」基金中央評議会は、すべての同胞に対し、我らの抵抗への支援活動に今日まで応えてくれていることを感謝する。この支援によって同胞諸氏は、コソヴォ解放軍の一層の強化、体系化、専門化の為に貴重な援助を為し、またコソヴォの野に山にあてどなくさまよう民衆に、負傷者に病人に、より充分な手当てを可能としてくれた。コソヴォ・アルバニア人の抵抗闘争におけるすべての兵卒、初年兵、輸送兵、指揮官が、この貢献を知っており、同胞諸氏に感謝している。
 にも関わらず、現時点までの我々の内部情報によればなお多くの同胞が、様々な質、様々な量で、闘いの中を生きながら、支配を受けながらも、自由と独立の実現の為に日々努力している。もしコソヴォが、コソヴォ解放軍に率いられて闘い、血を流す中で、民衆の意志の実現を直接に擁護せず、傍観者のままでいる者がいるとするなら、これはアルバニア人の栄誉にもとることだ。こうしたことは、早急に遅滞なく改善しなければならない。
 親愛なる同胞、兄弟姉妹よ。今この時、我が民衆とコソヴォ解放軍は勇猛果敢に敵と対決している。そして軍には、戦争の重荷に加え、住む場所を失った何百人何千人という我が民衆に心を砕くことが重荷となっている。また負傷者や病人は、困難な条件の為に、治る見込みもなく死に瀕している。コソヴォ解放軍総司令部は親愛なる同胞諸氏、昨日まで郷土愛の一心から他の基金、とりわけ「政府系」基金に援助してきた同胞諸氏に呼びかける。コソヴォにとって今日この上なく必要なそれらの援助が、我が民衆と、その自衛勢力である解放軍のもとへ届く様、諸君の側から圧力をかけて欲しい。援助が封印されたままにされておかない様に、また特定勢力の政治的思惑やその卑小な目的に利用されない様に、影響を与えて欲しい。
 総司令部は、解放運動に貢献しない様な地域地区単位の方法の寄せ集め、またその他の基金にも反対する。我が同志にとって見れば、地域単位で闘うことなどできず、野蛮な敵に対して地区単位で抵抗などできないのは明らかだ。総司令部こそ、解放運動の活動におけるあらゆる方法の集約を引き受けるのである。
 「故郷は訴える」基金中央評議会を通じ、総司令部は、様々な方法を集約する為の要員を任命する。その他のいかなる任命も認められない。
 我々の闘いは、勝利の日まで続く!
                                                                                                                      コソヴォ解放軍総司令部


「政治宣言 第23号」(1999.01.17)

 アルバニア民衆とコソヴォ解放軍は、我々がコソヴォ問題の政治的解決に賛成していることを示す具体的な例を、今日まで再三にわたり出してきた。ヨーロッパで最も犯罪的な[訳註:セルビア]軍人8人の釈放、それにまさる例が何かあるだろうか?これ以上の寛大さがあり得ようか?たとえ支配者の軍人兵士であっても、アルバニア民衆とコソヴォ解放軍はその人命を奪うことを好まないという証拠が、他にあり得るだろうか?これはコソヴォ解放軍の高潔な品性であり、コソヴォ解放軍の外交的かつ政治倫理的に大きな勝利であり、セルビアの国家テロリズムに対して解放軍は、ミロシェヴィチを頭目とし略奪者集団を含むチェトニク[訳註:第2次世界大戦中のセルビア軍事組織の呼称]・セルビアの行為でも知られる、残忍な市民への虐殺を行う為のいかなる名目をも、ベオグラードの犯罪者共に与えなくさせたのだ。
 レチャクReçakuでの虐殺[1999年1月16日、アルバニア人40人余りが惨殺死体で発見された事件]は、セルビア人政権は別としても、国際的な機関の責任でもある。彼らは、国連の憲章も規約も堅持していない。
 政府関係者も、本来そうであってはならないのに、ばらばらになっているアルバニア人政治に対する責任者だ。自由と独立の為の闘いにおいて人材と手段の統一を行えず、手をこまねいている。
 セルビアの殺人者共によるレチャクでの殺戮は、アルバニア人がみずから目覚め、アルバニア人が確信する為の、最後の警鐘とならねばならない。政党でもイデオロギーでも大統領府でも議会でもない、祖国の声というものがあり、コソヴォ解放軍があり、自由の砲声がある。祖国の声、闘う諸組織の声を認めず、また聞かない者には、雇われ根性に満ちた声しか聞こえないし、わかりもしないのだ。
 アルバニア人と全ての国民は、外部からの介入を求めるよりも、みずからの国民と祖国の為に、人間として国民としての義務を、みずから立って果たそうとしなければならない。
 アルバニア人はどこに住んでいようとも、コソヴォ解放軍と、自由の為の解放軍の闘いを様々な手段で支援しなければならない。
 コソヴォ解放軍だけが、チェトニクの殺戮の手を阻むことができると言える、現実の勢力である。もしアルバニア人がかつてない程に団結すれば、野蛮なセルビア人共は、アルバニア人が手にする武器という言葉の他、何もわかり得ないだろう。
 アルバニア人は、ただ祖国でのみ団結しなければならない。なぜなら、ひとはその祖国でなら犠牲にもなれるからだ。
                                                                                                                      コソヴォ解放軍総司令部


「政治宣言 第25号」(1999.02.05)

 コソヴォにおける状況を打開するべく仲介グループによって招請された国際会談の開催にのぞみ、コソヴォ解放軍総司令部は、これに参加する用意があること、またコソヴォと他の全ての地域の未来の為にも重要なこの会談が成功する様、貢献する意志があることを再度強調する。またこの機会に、近隣の諸国家諸国民と同様、国際機関とも連携する意志と決意があること、またコソヴォ解放軍が、市民の法に立脚し人間の尊厳と社会的正義を尊重する独立国家コソヴォを樹立する為に闘っていることを再度強調する。
 コソヴォ解放軍は、いま一度、あらゆる方面から現下のコソヴォ問題へ援助の手をさしのべる様、全てのアルバニア人に呼びかける。これらの援助はこれまで、また現在も、もっとも確かに自由を守り、セルビアによる迫害と殺戮に抗し、また民主主義と人権の勝利を確かなものにしている。これらの援助は、今なお自由に生きる権利を阻まれ続ける我が民の意志を再び強固なものにするだろう。
 コソヴォ解放軍総司令部は、全ての政治担当者、ランブイエ会談の出席者、招請を受けた人々が、あらゆる歴史的責任を請け負い、時代の分岐点に立たれんことを訴える。会談でアルバニア人代表団が、コソヴォの民衆、その自由と民主主義の為の闘いで明らかにされた意志を堅持するという、一貫した意見と決意を示すことは、コソヴォの利益に関わることだ。
 我々は、コソヴォ解放軍代表団に随行する政治担当者諸氏に訴える。我々の政治的思想信条は様々かも知れないが、コソヴォの利益は崇高なものであり、無条件に擁護されねばならない。その他いかなるやりとりも、将来コソヴォが自由で民主的な国家となったその時に関わってくるのだ。
 コソヴォ解放軍は、単に危機の回避のみならずコソヴォ問題の早期解決をも念頭に置く国際外交の誠実さと決断力を信頼し、ランブイエ会談に赴く。総司令部は、弾圧され虐殺されている民衆を守る為に国際機関が行動に出ると確信している。我々は、今後のコソヴォの状態に対するどんな条約協定の類も、国際法の規定に基き、コソヴォ民衆の自決権を尊重し、地域の平和と安定に資するものであると確信している。
 コソヴォ解放軍は、すべてのアルバニア人と団結し、対話という手段で危機を乗り越えるというこの新たな努力を進める。我々は、我々の仲間、我々の住処、我々の誇りと未来を守る為、武器を手にとった。それは常に唯一つの目標の為に行われる。  我々の目標は平和である。だがそれはしばしば、ただ銃口からのみ生まれるのだ。

                                                                                                                        コソヴォ解放軍総司令部


「政治宣言 第26号」(1999.02.05)

 コソヴォ解放軍は、ランブイエ会談の主催者である国際機関によってコソヴォ解放軍代表団が妨害を受けず安全裡に赴けることを充分に保障されたにも関わらず、ユーゴスラヴィア当局によりそれを阻まれていることについて、不満を表明する。こうした事態によって我々は、我々の進む道が困難なものであること、またベオグラード政権の体質がいかなるものかについて考えざるを得ない。同時にまた、アルバニア人側の他の出席者らがコソヴォ解放軍との連帯を表明していることに対しては、敬意を表さないわけにいかない。
 この機会にいま一度、我々が対話によるコソヴォ独立問題の解決に努力しているということを強調しておきたい。これは、コソヴォに自由と平和をもたらす上で、我々にとってこれ以上のものなどない手段である。我々がランブイエに赴くのは、自由と独立と民主主義を求めるコソヴォ民衆の真摯な声を伝える為なのだ。
 コソヴォ解放軍総司令部は、アルバニア人側の他の出席者らがコソヴォ解放軍とのこうした連帯を維持し、コソヴォの利益を守るコソヴォ解放軍の揺るぎない姿勢に理解を示してくれることを期待する。アルバニア人側代表との共同を我々が求めるのは、最大の目的を達成する為であり、コソヴォ民衆の意志に最大限の敬意を払うからだ。コソヴォ解放軍の主要目標は、過去においても、現在においても、また未来においても権力の奪取などではない。万人が望む自由の獲得であり、民主的な体制の確立である。我々は、アルバニア人側代表がコソヴォ解放軍との連帯を実現すべく様々の方策を講じてくれるものと信じている。コソヴォの幸福と誇りと自由をたたえ守るコソヴォ解放軍と共同することは、アルバニア人側代表の名誉に関わることなのだ。
 ベオグラード政権が国際外交の場で表した態度、またその生み出した緊張と警戒感は、コソヴォ解放軍抜きでコソヴォの未来を交渉することなどあり得ないという国際機関の確信をはっきりしたものにしている。コソヴォ民衆のコソヴォ解放軍に対する支持と信頼は、常に解放軍を強化し、そして解放軍はコソヴォの自由と独立の到来を更に早めるのである。

                                                                                                                        コソヴォ解放軍総司令部


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